「しょうがないか…」とガマンさせられていることが、僕らの日常には本当に多い。
あまりにたくさんガマンを強いられているので、ガマンには慣れればいいやと思いがちだ。
でも、小さなガマンが積み重なっていけば、いつかは大きなストレスになる。
それは、児童虐待やDV、いじめなどの暴力事件や、やっつけ仕事、自己評価の低さを温存・増殖させてしまう。
つまり、みんなが何かにガマンを強いられている現実は、公害であり、社会問題なんだ。
そうした社会問題に気づくことで、その問題を解決するためのビジネスも生まれる。
たとえば、女子トイレ。
用を足すだけでなく、メイク直し、授乳、乳幼児のおしっこ付き合いなど、衛生的でない環境でいろいろな用事を便所で行うことにガマンしてる女性は少なくない。
女子トイレは、用途別に分け、個室を増やすことでその店の集客数も増やせる。
だから、それを理解した店や駅では、ユニバーサルデザイントイレ(多目的・多機能トイレ)を導入し始めている。
なのに、まだまだ多くのターミナル駅やデパート、大型イベント会場などの女子トイレは、いつも混雑してるよね。
あれも立派な社会問題なんだ。
「みんな」がその混雑にガマンを強いられているのだから。
そのように「みんながガマンしてること」=社会問題だと問題意識を持った人は、解決活動を始める。
NPO法人Checkでは、ユニバーサルデザイントイレの位置情報をGoogleマップに入力する活動を続けてきた。
多くの人が使うトイレでは、車椅子で移動する障害者や高齢者、ベビーカーを利用する親や、オストメイト(人工肛門・人工膀胱))を造設した人などは、スペースが狭すぎて用を足せない。
そうした属性の人々は、社会の中では少数派(マイノリティ)だったからだ。
●車椅子を使っている人を含めた肢体障がい者:
176万人●1歳未満の乳幼児(=その子を連れて外出する親御さん):
107万人●オストメイト(人工肛門・人工膀胱を増設されている方):
15万人 1億2000万人が住んでいる日本では、上記3者の合計(298万人)は人口の約2.5%にすぎない。
そうすると、最大公約数の国民向けに政策を作る国家は、ずっと票にもならない少数派を切り捨ててきた。
しかし、ふつうのトイレに行けない彼らは外出をためらうことになり、遠出の旅行に行かなければならない時は2週間以上も前から水分を摂取せず、トイレをガマンできる体を準備しないといけなかった。
このままでは、旅行代理店は、高齢化が進む時代の中で潜在的な市場を自ら放棄しているのと同じだ。
高齢化すれば、誰もがいつかは車椅子の利用者になる可能性が高いのだから。
そこで、旅行代理店の営業をやめ、ユニバーサルデザイントイレの位置情報をネット上にシェアし始めたのが、NPO法人の代表理事・金子さんなのだ。
そして、彼はユニバーサルデザイントイレだけでなく、
「トイレシェアリング・ステッカー」を開発した。

要は、店の外に「うちはトイレを貸し出してますよ。どうぞお気軽に使ってください」というビジュアル・メッセージを絵だけで伝えるというもので、男女のアイコンだけならフツーのトイレ、車椅子のアイコンがあればユニバーサルデザイントイレがその店にあるとわかるのだ。
このステッカーによって救われる人は、とんでもなくたくさんいる。
●過敏性腸症候群の患者:
1200万人●過活動膀胱の患者(トイレが近い人):
810万人●「ほぼ毎日」尿もれの症状のある女性:
50万人●外国人登録者数(日本語が読めない):
208万人●1年間で来日する外国人(日本語が読めない):
622万人 上記の5者に、前述の3者を足すと、
約3200万人に膨れ上がる。
この数は、日本に暮らす人の約27%(4人に1人以上)に相当する。
さらに、今後、高齢化が進むに従って尿漏れ不安の高齢者が増えていくのは必至。
そうなると、潜在的には「4人に1人以上」どころか、
「3人に1人以上」の人がトイレに困ってしまう(=外出に不安を感じている)のが実態だろう。
彼らにとっては、目の前にお店があっても、トイレだけ借りて出てくることははばかられるし、借りられる保証もないので店の人に声をかけにくい。
だから、外出するのさえためらってしまう。
それは、店舗で事業を経営する人にとっても、営業上の大きな機会損失である。
これを裏返すと、店はこのステッカーを買って店先やトイレの入口などに貼り出しておくだけで、
従来よりも1.3倍程度の売上増を期待できることになる。
なぜなら、このステッカーを貼れば、Googleマップにアップロードできるので、顧客自身がトイレ探しと同時に店を発見してくれるし、トイレの利用者にはクーポンや無料券、チラシなどを手渡せるし、「ついで買い」も期待できるからだ。
観光できた外国人のような「一見さん」の新規顧客を開拓できるだけでなく、地元在住の人なら常連客にもなってくれるだろう。
もっとも、メリットは、店や「トイレ不安」の客だけにあるのではない。
このステッカーが今後、どんどん売れていけば、その収入によってNPO法人Checkは、ユニバーサルデザイントイレを必要とする人たちにもっと多くの情報をネット上でシェアできるように、位置情報の発掘とアップロードを速く多く進めることができる。
そして、そのことはやがて「ユニバーサルデザイントイレを作ると売上増になる」という気づきを、観光地の店舗やデパートなどの大型店舗、巨大催事場などの経営者たちに与えるだろう。
そして、最終的にこの国にトイレ不安で外出できない人を減らせるのだ。
つまり、マイノリティを救うためには、「トイレが不安」という共通の属性を持つ人が他にもたくさんいると気づき、そうした人たちも含めた「大きな社会問題」であることをアピールできれば、マイノリティの問題を解決できる仕組みが作れるということなんだ。
「少数派だから無理」という発想で思考停止するのではなく、マイノリティと本質的に同じ問題を抱えている人を想起すれば、その悩みや不安がもっと多くの人に共通するものだと気づく。
それこそが
UD(ユニバーサルデザイン)による問題解決の発想であり、少数派として扱われている難病やLGBT、ホームレス、ニートなどにも十分に応用できるはずのものだと思えれば、これまで解決できなかった少数派の問題の解決にも希望を感じることはできないだろうか?
NPO法人Checkが働く目的(=ミッション)は、「誰もが気兼ねなく外出できる社会を作ること」である。
そのために必要な活動を専従スタッフとして毎日行うには、当然、人件費が必要だ。
だから、NPOであっても、商品を生み出している。
このように、社会問題の解決をお題目の目標ではなく、毎日の事業目的とし、活動を持続可能にさせるための収益源を作り、ビジネスを「手段」にして働くのが、社会起業家なのだ。
NPO法人Check代表理事の金子さんは、10月20日(土)に、「社会起業家・養成ゼミTOKYO」に講師として、受講生に直接指導する。
身近に社会起業を学ぶチャンスがないのなら、下記のページを早めにチェックしてみてほしい。
銀行や大学、ITベンチャーなどで働く人たちも、既に学び始めている。
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