4月22日に全国の書店で発売される新刊本
『よのなかを変える技術 14歳からのソーシャルデザイン入門』(
今一生・著/河出書房新社)。
本を作るときは、何度も原稿を練り上げた後で、初めて活字になるわけですが、今回の本もそうした過程を経て、作られています。
そこで、本書の「序章」の部分だけ、最初に書いた原文(=直す前のもの)を公開します。
本書をこれから読まれる方なら、どこを抑えて直したのかに思い当たるはず。
活字になったものより、原文の方がストレートに本書の意図を伝えているかもしれません。
では、どうぞ。
序章 ~よのなかを変える「ソーシャルデザイン」って何?「こんなよのなかで、いいんだろうか?」
そう思ったことが、きみにはあるかい?
たとえば、同じクラスでいつもイジメられている友だちを見たとき、「みんなどうしてあの子をイジメるんだろう」と心を痛めたことは?
どうしてもテストの点が伸びない教科の勉強をしているとき、「なんでみんながみんな同じようにこの教科を勉強しなくちゃいけないの?」と疑問を感じたことは?
◆
よのなかには、イジメをなくした例がたくさんある。
特定の教科の成績が良くなかったのに、大人になってから仕事で成功して億万長者になった人も珍しくない。
なのに、「イジメはなくならないもの」とか、「この教科は学ばなければいけないもの」という具合に、仕方なく目の前の現実を受け入れて育つ人が少なくない。
そのように現実をそのまま受け入れて生きていくだけでは、本来なら解決できるはずの問題はいつまでも解決されない。
それどころか、きみ自身が本当にやりたいことを先送りして、つらい現実にガマンだけで乗り切る人生を続けていくことにもなる。
実際、親や教師から、こんなセリフを聞いて育った人は多い。
「より良い高校に入って、より優秀な大学に入れば、一生安定して働き続けられる大企業にも入れるし、あなたの好きなこともできる。そのように選択肢が増えるのだから、勉強を最優先しなさい」
ところが、その言葉を鵜呑みにして大学に入ってみると、自分のやりたいことをやろうと思っても、周囲からこう言われることになる。
「どうせプロにはなれないのだから、やりたいことは趣味にして、一生安定して働き続けられる大企業に就職しなさい」
受験偏差値で優秀な人ほど、「せっかく良い大学に入ったのだからやりたいことは趣味でやれ」と周囲の家族や友人、先生やバイト先の大人にまで言われまくるのだ。
そして、多くの人はその声の大きさに負け、仕方なく周囲がそうするように就職する。
しかし、一生安定して働き続けられる大企業に入れても、「そんな夢のような会社などどこにも無かったのだ」と気づくのは数十年後。現時点でどんなに社員数が多く、世界中に事業を展開する大きな企業でも、数十年後は誰にも保証できない。
22歳で入社した時点では周囲からうらやましがられるような大企業だったはずなのに、40代になる頃にはリストラ(解雇)によって会社から追い出されたり、会社が倒産したり、他の企業に買収されるなど、自分の力ではどうしようもない現実を突きつけられることが珍しくなくなった。
大企業から追い出されたら、それまでの年収と同じ額面で他社に再就職するのは難しい。
その頃、きみは「人の親」になっている。子どもたちに私立の学校に行かせる学費を払えず、公立へ転校してもらうしかない。数千万円のローン(借金)で購入したマイホームも誰かに売り飛ばして賃貸マンションに引っ越すしかない。
それまで働かなくてもよかった配偶者には、働きに出てもらうしかない。
日本の大企業で働くサラリーマンでは、こうした現実に直面して苦しむ家庭が少なくなくなった。
それは同時に、低学歴の人たちの生活が、高学歴の人よりもっと貧しくなっていることを意味している。
15歳で一生の収入額面まで決まってしまう 親の資産と子どもの学歴が比例してる現代の日本では、親が高所得になる仕事につけないばかりに、その子どもは小さい頃から塾に通わせるなどの教育投資を受けられず、低学歴になる傾向がある。
中学校を卒業する15歳の時点で、小さい頃から塾や通信添削などの学費を親が払えたために勉強ができるようになった子は優秀な高校へ行き、大学進学から大企業を目指し、高所得が得られるチャンスにありつく。
でも、親が低学歴で低所得であるために勉強が満足にできなかった子は、学費や学力の問題から大学へ進学できず、大企業の下請けの中小企業か、大卒者と比べて安い給与の会社で働くよう、進路指導で就職や専門学校への進学を勧められる。
なぜ、貧しい親の子というだけで、大人になってからも低収入の人生にならなければいけないの?
なぜ、15歳の時点で「高学歴インテリ文化」と「低学歴ヤンキー文化」に分断されるの?
この2つの文化は、水と油ほど違う。優秀な高校に通う子は、おしゃれなカフェでまったりとくつろぎながら、大学進学の希望や将来の仕事の夢を語り合う。
他方、受験偏差値ランキングで下から数えた方が早い高校に通う子は、タバコの煙でむせるようなたまり場で遊びや犯罪、家族の暗い相談話をする。
同じ15歳でも、その先の人生は180度変わってしまう。
前者は「勝ち組」になろうとし、後者は「負け組」として世間から後ろ指をさされながら生きることになる。
自分が勉強をがんばればがんばるほど、「自分より勉強のできない子」が増えてゆき、学力差で他人を蹴落として多くの同世代を「低学歴」へ追い詰めるのだ。
そんな「よのなかの仕組み」に乗っかって「自分だけの幸せ」を追いかけたのが、きみの親の世代の高学歴の人たちだ。
彼らは自分が蹴落とした低学歴の同世代を振り返ることなどせず、「自分の家族さえ安心と平和な暮らしが続けばいい」と考えてきた。
自分が学力で蹴落としてきた人のことなど考えなくても、何も困らないからだ。
おかげで低学歴を強いられた人たちの中には、まともな仕事ができなくなって犯罪に手を染めたり、自暴自棄になって「誰でもよかった」と罪もない人を傷つける無差別殺傷事件を起こす人が現れたり、自殺や貧困、精神病、子ども虐待などの深刻で切実な問題に苦しむ人も増えた。
こんなよのなかで、生きやすいかな?
「勉強のできない人は、勉強を怠けていたんだから、安い給料で働かされればいい」
そう反論するのも自由だ。
しかし、親が貧しいために塾に行けず、塾に行けた子の成績をなかなか超えられない子の努力不足を責めたところで、その子の成績は上がるだろうか?

(※NHKスペシャルで紹介された家庭の経済状況と子どもの進学格差を示すデータ。
年収400万円世帯の大学進学率は、年収1000万円世帯の半分しかない)
それに、学校の勉強を嫌うこと自体、ダメなことだろうか?
日本では近年、ようやく高校生の2人に1人が大学に進学する時代になった。
でも、たとえ全員が大学に入る時代になっても、東大や早稲田、慶應などの偏差値の高いレベルの大学と、地方の無名の新設の大学とでは、入社できる企業の規模は明らかに違う。受験偏差値の高い大学の卒業生は大企業に入れるが、低い大学やそれ以下の学歴なら中小企業にしか入れない。
それが、会社が人を雇う際の傾向であり、「よのなかの仕組み」だ。
結局、大学のレベルによって入社後の給与額面に格差が生じることは避けられない。どこまでいっても、勉強のできる人とできない人とで収入格差が残ってしまう。それは、勉強のできる子は幸せになれるが、できない子は同じ幸せは得られない「よのなかの仕組み」があるってこと。
その仕組みは本当に正しい?
むしろ、親の所得を上げなくても勉強ができるようになる方法を作り出したり、高学歴にならなくても高所得になれる仕組みを作り出す方が、長い人生では必要な学びになるんじゃないかな?
◆
きみが勉強に努力すればするほど誰かを不幸のままにする「よのなかの仕組み」を疑い、自分を含めて誰もがより生きやすくなる新しい「よのなかの仕組み」を考え、作り出したいなら、この本はそのための技術を学ぶ良いチャンスになる。
このように、選挙や政治家に頼らず、民間で問題を解決していく新しい方法を作り出し、「よのなかの仕組み」を変えていく活動を「ソーシャルデザイン」と呼ぶ。
今すぐ赤ペンや蛍光ペンを用意し、気になる文章に線を引いてみてほしい。
きみもよのなかを今よりもっと生きやすいものへ変えられることを実感していけるよ。

(今すぐ買いたい方は
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■『よのなかを変える技術』の目次を発表 ~14歳から読めるソーシャルデザイン入門書 ■1週間の入院で僕も考えた ~誰かと共に暮らすために必要な自分の価値 ■「助けてあげるよ」と言い寄ってこられたら、あなたは? ■自殺防止の番組で、自殺したくなくなった? ■15歳で文化を仕分けされる日本人★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★■本の商業出版を考えている個人・法人の方は、こちらへ(※もうすぐ〆きります)
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