ろくで なし子さんの
『 ワイセツって何ですか? 「自称芸術家」と呼ばれた私』(金曜日)、読了!
この本には、逮捕・裁判に関する実録マンガ、彼女の作品、園子温監督との対談などが収録されている。
3時間ほどあれば読めてしまうが、中身は濃い。
権力の怖さ、「まんこ」と発語することすらできない不自由の意味、女性性の尊厳を守ることへの社会的認識の低さなどが、彼女の「まんこアート」によって露呈させられてしまう1冊だ。
タイトルは『ワイセツって何ですか?』だが、本書の本質をふまえるなら、『わたしのまんこは犯罪ですか?』といったところか。
誰のまんこなら、「わいせつ」なのか?
赤ちゃんのまんこは、ワイセツですか?
あばあちゃんのまんこは、ワイセツですか?
人形のまんこは、ワイセツですか?
あなたのまんこは、ワイセツですか?
あなたの娘のまんこは、ワイセツですか?
誰のまんこなら、ワイセツになるんですか?
この問いかけは、まんこ=わいせつにしたがる、あるいはまんこを「ヴァギナ」に言い換えて問題なしと早合点する、そしてろくでなし子さんの逮捕が小さな事件だと思いすごしてしまう人たちすべてに突き付けられた「踏み絵」なのだ。
日本人の60代の元校長は、フィリピンで1万2000人の少女・女性を買春した。
一方、まんこのデータのURLを送信しただけで、ろくでなし子さんは逮捕された。
そして今なお、親という権力装置の下で虐待を受けている子どもが少なくない。
「まんこ」といえば下品で、「ヴァギナ」といえば上品だとする高学歴インテリ文化ならではの感性は、買春した元校長が「タガログ語や英語を使っていると別人格になった」と証言したのと同じものだ。
日本でまんこをワイセツにしたのは、男ばかりの判事と警察である。
そして、彼らの後ろから「そうだ、そうだ」とついていく、一部の高学歴インテリ文化圏の女性たちだ。
本書で園子温監督は、「法すれすれのところまでいかないと表現にならない」と指摘している。
その構えは、常識や偏見などを乗り越えて「脱法」に近い形で社会変革を進める優秀なソーシャルデザインの担い手に通底する。
政治や行政、既存の企業が満足に解決できない社会的課題の解決に取り組む社会起業家たちは、遅かれ早かれ保守的な政治や行政によって法の内側に入れられ、不当な不自由を味わうリスクを背負っている。
シェアハウスも、子育てシェアサービスも、政治や行政によっていずれ法の内側のものに組み込まれる日が来るかもしれない。
既得権益である政治家や官僚、彼らを支える高学歴インテリ文化は、在野で自由に動くことを嫌うのだ。
社会起業家によるソーシャルデザインは既得権益の権力を奪い、彼らによる支配の網の目から逸脱してしまう。
だから、新しい価値観は、常に既得権益との衝突が避けられない。
でも、生きずらい時代状況を変え、社会変革を成し遂げようとするなら、そのリスクは避けようがないものだ。
どれだけソーシャルデザインの担い手が次の時代の正当性を訴えようとも、そして彼らの仕事によってそれまで救われなかった人が続々と救われるようになろうとも、権力というものは常に後ろ向きな構えで既得権益を守ろうとするからだ。
そうした守旧派の多くは、高学歴インテリ文化を自明のものとして生きている。
だから、ろくでなし子さんは、上の世代のフェミニストにすら関心の対象から外され、下の世代の女性たちからも「イタいもの」として受けられている面がある。
だが、それゆえにまんこアートが提示した「きみのまんこは誰のもの?」「誰のまんこがわいせつなの?」という問いかけは、権力・既得権益・旧弊な男性性・高学歴インテリ文化を根底から突き崩す価値を持っている。
ろくでなし子さんは、『裸の王様』に出てきた子どもである。
「王様はなんで裸なの?」
そう問いかけ続けることは、生きずらい社会をそのままにしたくないという変革の意志そのものなのだ。
ちなみに、本日(4月10日)発売の「週刊金曜日」( 2015年 4/10 号) には、ろくでなし子さんの2度目の逮捕や事件についての新作漫画描き下ろしが載っている。

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