アメリカの社会起業家として有名な
PeaceWorksの事業は、あえて原材料をパレスチナから仕入れ、イスラエルで加工することで、両地域を経済的に結びつけ、相互理解を促進する。
そして、その製品をアメリカなど先進国で販売し、収益をあげるという流れである。
紛争地域の経済の活性化に貢献できるだけでなく、高品質な商品であることから、高い市場競争力を持って事業を順調に拡大。現在では食品だけでなく衣料品も扱う。
収益金の一部は、紛争地域で住民の対立感情を緩和するために活動しているコミュニティ団体への寄付金となっている。
…と、ここまでは下記サイトでの説明。
http://www.etic.or.jp/social/case/sv01.html Peaceworksのすごさは、国としては国境線の内外で敵対しているはずの両国の民を経済的な相互依存関係の仕組みに組み込んだことだ。
国どうしはいつまでもドンパチをやってるが、市民レベルがほしいのは仕事であり、安心であり、平和だ。
それは、両国の市民に共通したニーズである。
敵対する双方が納得できる仕組みを探す発想は、きわめてアジア的な発想だろう。
Peaceworksを創立したダニエル・ルベツキーが中東の現地で語る動画がある。
英語だけど、現場の様子が伝わってくるので、さらっと見てほしい。
パレスチナの農家をイスラエルが攻撃すれば、イスラエルの工場に原材料が届かなくなる。
だから、イスラエルはパレスチナの農家を攻撃できなくなる。
逆に、イスラエルの工場をパレスチナが攻撃すれば、パレスチナの農民は原材料を売れなくなり、自分たちが困る。
だから、パレスチナの農家とイスラエルの工場労働者は、自国の戦士や政府に「あそこだけは見逃して」と懇願することになる。
このビジネスが拡大すれば、農家や工場が増え、それは同時に非戦闘エリアを拡大することにつながる。
戦争をしないエリアが圧倒的に広がれば、自分たちだけ命がけで戦闘してる戦士たちはバカらしくなるだろう。
国を変えることは難しいが、それに比べれば、市民を変えることは難しくないのかもしれない。
もちろん、両政府もこうした動きを目の上のたんこぶと思ってるふしがあり、原材料と工場生産品をトレードする国境線は常に緊張状態になり、ドンパチが絶えず、Peaceworksは事業の撤退を思いつめたこともあった。
しかし、なんと両国の市民(農家と工場労働者)が「2回に1回ドンパチで商売が成立できなかったら私たちは2倍働くから撤退しないでくれ」とPeaceworksに懇願したそうだ。
敵対する両者に共通する強いニーズを発見し、そのニーズに応えるものを提供する。
これは、社会を変えるために必要な発想の基本だ。
敵対する関係には、関心と無関心、右派と左派、政治家と有権者、支援・被支援、経営者と労働者、男と女、大人と子ども、日本人と外国人など、いろいろあるだろう。
僕らがより生きやすい社会を作りたいなら、敵対する両者に共通する強いニーズを発見し、それに応えられるものを開発することが、対処療法に陥らない発想だと肝に銘じる必要があるだろう。
自分にとっての正論を叫んでデモをやって憂さを晴らすのもいいが、ひとりよがりの正論ほど敵対する相手には響かない。
それより、一緒に美味しい飯を食ったり、かわいいアイドルを見て喜んだり、一緒に楽しんだり、汗を流して喜べる作業を無理なくできる仕組みを作り出す方が、長い目で見れば、対立を超えた新しいパラダイムを社会に根付かせていくことになる。
それは、セックスの作法に似ている。
子どもを作るだけでなく、関係や思い出を作るという意味において。
よのなかの仕組みを変えるってことは、それぐらい泥臭い作業なんだと思う。
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