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■費用対効果の悪い自殺対策 ~1人減らすのに血税400万円を使っても評価できる?


 毎年3月は、「自殺防止対策強化」の月間だ。
 内閣府が啓発などにあれこれ動いてる

 そこで、自殺対策推進室を設け、官民連携の協働会議を主催している内閣府の仕事の成果を統計で見てみよう。
 統計データが続くけど、わかりにくいものではないので、面白がって読んでみて!

(長文なので、先に結論を書いときます。
 自殺対策に巨額な税金をつぎ込んでも、9割以上の自殺者に効果の無かった対策を、官僚も自殺対策推進会議の委員も政治家も根本的に改めないため、自殺対策は民間でやる以外にありません

 まず、ホームページで公開されてる自殺者数の年計をチェックする(※数字は確定値)。

 平成25年(2013年) 27,283人 対前年比  575人(約2.1%)減
 平成24年(2012年) 27,858人 対前年比 2,793人(約9.1%)減
 平成23年(2011年) 30,651人 対前年比 1,039人(約3.3%)減
 平成22年(2010年) 31,690人 対前年比 1,155人(約3.5%)減
 平成21年(2009年) 32,845人 対前年比  596人(約1.8%)
 平成20年(2008年) 32,249人 対前年比  844人(約2.6%)減
 平成19年(2007年) 33,093人 対前年比  938人(約2.9%)
 平成18年(2006年) 32,155人 対前年比  397人(約1.2%)減
 平成17年(2005年) 32,552人 対前年比  938人(約2.9%)

 こうして見ると、「近年は自殺者数が減っている」と早合点する人もいるだろう。
 しかし、人口が減れば、その増減率に比例して自殺者数が自然に減るのも当たり前だよね。

 そこで、下記の人口の推移を見てほしい。
 近年は、人口自体が減っていることがわかる。

 平成24年(2012年) 127,515人 対前年比 0.22%減
 平成23年(2011年) 127,799人 対前年比 0.20%減
 平成22年(2010年) 128,057人 対前年比 0.05%増
 平成21年(2009年) 127,510人 対前年比 0.14%減
 平成20年(2008年) 127,692人 対前年比 0.06%減
 平成19年(2007年) 127,771人 対前年比 0.00%(横ばい)
 平成18年(2006年) 127,770人 対前年比 0.00%(横ばい)
 平成17年(2005年) 127,768人 対前年比 0.13%増

 人口が減る要因の多くは死だが、自殺以外にも病死や事故死などいろいろある。

 そこで、日本人の死因の中で自殺が占める確率を観てみよう(※人口動態統計による)。
 自殺で死ぬ人は、長い間、ずっと死因の中でもほぼ横ばいだ。

JISATSU02.jpg


 自殺対策基本法は平成18年(2006年)に公布・施行されたのだけど、その前後で自殺者数がどう変化したのかを、「自殺者数の長期的推移」(人口動態統計)を観てみよう。

JISATSU01.jpg

 自殺者数は、1997年に急増してから高い水準を保ったまま、わずかに推移しているにすぎない。
 前年度比でわずか数%程度を減らしたことを、自殺対策基本法や自殺対策会議の成果だと考えるのは、いかにもおめでたい。

 あなたが自殺対策の会議メンバーだったら、わずかにしか変化しない結果を喜んで「俺たちは自殺者数を減らしたぞ!」と世の中に誇れるだろうか?

 1997年以前の社会構造と現在の社会構造との劇的な変化の意味を分析し、それをふまえた上で自殺対策におけるイノベーションを興さない限り、自殺を劇的に減らす対策など講じるなどできないことは明白だ。

 さらに言うなら、もっと長い期間(1899~2003年の変化)で観れば、日本の自殺者数は人口の増減と景気に連動している傾向が大きいので、自殺率は長年さほど変わっていない。

 さほど変わっていないということは、2006年以後の自殺対策基本法やその後の内閣府の取り組みは焼け石に水で、統計的に有意だと明言できるような公共投資はなされてはいないのだ。

 しかし、こういう長期的な統計の読み取りができないのか、自殺対策の官民連携協働会議のメンバーである人が突然、僕にあれこれツィートしてきた。

 そこで彼の発言を見てみると、どうやら自殺者を劇的に減らすイノベーションを興すつもりはないらしい。

JISATSU03.jpg
(※実際のつぶやきはコチラ

 万能薬がなくても、万能薬に近づけるように自分の努力不足を真摯に反省し、自分よりはるかに優秀な解決の仕組みを持つ人から教えを乞うか、できる人に席を譲るのが、金をもらって仕事をするプロの責任のはずだ。

 あなたは、彼の発言に自殺対策に取り組む相応の覚悟や責任を感じることができるだろうか?

 僕の目には、無能でも既得権益にしがみつく政治家のように映る。
 自殺にまで追い詰められる人々の深刻さと比べると、あまりにも他人事のような構えに見えて、憤りすら覚える。

 試しに、あなたも官民連携の会議の結果としての自殺対策について「相応の評価」をしてみてほしい。

 考える資料として、自殺対策の関連予算も示しておく(※平成25年度は予算案の額面。それ以外は計上された予算額)。

 平成25年(2013年) 対前年比  575人(約2.1%)減 予算 28,732,106(千円)
 平成24年(2012年) 対前年比 2,793人(約9.1%)減 予算 23,628,562(千円)
 平成23年(2011年) 対前年比 1,039人(約3.3%)減 予算 13,421,344(千円)
 平成22年(2010年) 対前年比 1,155人(約3.5%)減 予算 12,446,000(千円)
 平成21年(2009年) 対前年比  596人(約1.8%) 予算 13,577,505(千円)
 平成20年(2008年) 対前年比  844人(約2.6%)減 予算 4,446,242(千円)
 平成19年(2007年) 対前年比  938人(約2.9%) 予算 24,684,039(千円)

 自殺対策の予算は、年々増えている
 しかも、近年は毎年50億円以上も積み上げられている。

 この統計によってその年の予算と次年度の自殺者数の増減を比べることができ、1人あたりの対策費の費用対効果がわかる。
 平成24年(2012年)には予算が236億円もついたのに、翌年には575人しか自殺者数を減らせなかった。
 1人の自殺者を減らすのに、約411万円も税金を支出したのだ。
 この額面は、サラリーマンの平均年収に匹敵する。

 そこで、平成19年(2007年)から平成25年(2013年)までの6年間に支出された総予算と、減らせた自殺者の総数を比べてみる。

 減らせた自殺者数は、5810人。
 総予算は、92,203,692(千円)=922億円。

 6年間でみると、1人の自殺者を減らすのに、年平均で約159万円を使ってきたことになる。
 これは、近年の方が1人を救うために使う金の費用対効果が悪くなっていることを意味している。

 予算はどんどん増えてるのに、費用対効果が悪くなる対策に金を出し続けている現実が、ここにはある。
 予算を上積みすればするほど、1人を減らすための金が増えてしまうのだ。

 仮に、内閣府が「成果を出している」と評価しているなら、どういうことになるか。

 現状の対策と予算のままで「自殺ゼロ」を次年度の年間目標とした場合、236億円÷2.1%=1兆1238億円。
 これは、日本の歳出の1%に相当する莫大な支出だ。

 こんな莫大な予算を各省庁からかき集めるなんて、非現実的だ。
 言い換えれば、「自殺ゼロ」なんて目標は、延々と先送りされることが運命づけられているといえよう。
(※僕自身は、国家による「自殺ゼロ」政策が良いことだとは全然思わない)

 しかも、警察庁の発表している「自殺統計」が、捜査などによって自殺であると判明した時点で自殺統計原票を作成し、計上しているのに対し、厚労省の「人口動態統計」は自殺、他殺あるいは事故死のいずれか不明のときは自殺以外で処理しており、死亡診断書等について作成者から自殺の旨訂正報告がない場合は、自殺に計上していない

 たとえば、精神科医が買わせた処方薬を過剰に摂取して死亡した人の場合、それが自殺企図によるかどうかがはっきりしない場合、厚労省は自殺者として認めていないのだ。

(注:治療の成果を出してる精神科医が一部にいるのは、承知している。
 だが、彼らは全国に点在し、通院や入院に莫大なコストがかかるため、貧困層には無理。
 しかも、彼らでも外部の多様な人材との連携には関心が薄く、貧困や孤立などの社会的病理を解決するまでの面倒は見ない。
 一度治癒しても、病気が再発すれば、自分に金を運んでくれるリピーターとして囲い込んで歓迎するだけ。
 そもそも、良識派がいるからといって、精神医療の業界全体の罪を免罪することはできない。
 精神科医は、多剤処方で亡くなられた患者の葬式に何度出席したのかを誠実に公表してから、自分の仕事の正当性を語るのが筋だろう)

 現実の自殺者数は、厚労省が把握しているよりはるかに多く、自殺対策の費用対効果はさらに悪いものになる。
 100年経っても「自殺ゼロ」なんてありえない。

★なぜ、同額の予算内でより多くの自殺者数を減らせる仕組みを作り出すイノベーションができないのか?

 官僚は、政治家にその仕事の成果を突っ込まれない限り、歳出の費用対効果を考える必要がないからだ。
 だから、対策会議のメンバーたちが問題解決のイノベーションを興せなくても、税金泥棒でも、クビにはしない。

 自殺は統計・ヒアリング・アンケートだけでは本当の理由が見えてこない。
 当事者と付き合い、信頼関係をゆっくりと築き上げ、本当に悩んでることを無理なくうちあけられる寄り沿いの積み重ねでないと本当のところは見えないのだ。

 自殺対策を標榜しながら調査を重視するNPOが会議の委員に参加しても、たいした成果を出せないのは、NPO側がその泥臭い活動を嫌がるからなのだ。

 このまま内閣府の自殺対策が進めば、どんどん費用対効果の悪い対策に予算が増えてしまう恐れがある。
 これを無駄遣いと呼ばず、何を無駄遣いというのか?

 自殺対策に使われる血税は、年間3万人の自殺者たちを含む国民が、生き延びるために使いたくても使えずに、国に納めてきた金だ。

 そこで費用対効果が悪い対策しか立てられないままでいる会議メンバーに対して黙っていては、僕は自殺で亡くなった友人たちや今なお自殺を選びかねない友人たちに顔向けできない。

 自殺を考える人の中には、実の親から性的虐待を受け続けても児童相談所にも相談できないままたった一人で苦しみ続ける10代の少女もいれば、仕事がまったくない地方の山奥の集落の家の中で孤立して声を上げたくても相談機関に行ける交通費も無ければ電話代も払えずに飢え死にしかねない人すらいる。

 現状の自殺対策では、彼らは「想定外」とされており、会議メンバーの「関心外」であり、「部外者」だ。
 アンケートやヒアリング、統計だけではこぼれ落ちてしまう孤立者たちの声を、僕らは想像しておこう。

 自殺対策予算として国から自治体へ流れてくる金は、自殺を考える当事者に直接の恩恵も実感ももたらさない。
 だから、自殺者が劇的に減らないのかもしれないのだ。

 費用対効果の悪い自殺対策のままなら、いくら税金を増やしてもその分だけ自殺者を減らすことはできないってこと。

 ダメな対策にまだまだ税金が投入されるとしたら、増税と借金で増え続ける歳出を埋め合わせてる日本の財政をさらに圧迫し、今よりもっと生きずらい世の中へ導くのと同じなのだ。

 それでは、自殺対策をやればやるほど、自殺者数を減らすどころか、増やしてしまいかねない。
 それでも、あなたは「1人を救うのに500万円でも1000万円でも使うべき」と思うだろうか?

 そんな選択肢よりも、費用対効果の悪い対策案しか出せない連中を一刻も早くクビにして、彼らよりもはるかに優秀な人材を急いで集める方が理に適っているのではないか?

 自殺対策の会議メンバーが自発的に辞任しない現状に、国民はもっと怒ってもいいんだ。
 野党の国会議員にも自殺対策関連予算の費用対効果の悪さを国会で質問させ、内閣府の官僚の責任を追及してもらおう。

 国会議員はたいてい個人事務所のホームページを持ってるから、メールでこのブログ記事のリンクを教えてやってもいいだろうし、twitterアカウントを持ってる議員なら直接リンクを教えてあげるといい。

 「こんな政治が3流のダメな国に生まれたのだから仕方ない」と無力感を覚えて孤立するより、「あいつは税金でメシ食ってるのに使えないヤツだ」とみんなで怒る方が、精神衛生的にも良いし、そのこと自体が有効な自殺対策にもなりうる。

 減るはずの自殺者を効果的に減らせずにいるのは、僕ら国民が自分たちの支払う血税の使い道を厳しく問わないという怠慢にも問題があるんだ。

 それは、いつか、自殺者だけでなく、日本国民全体へ大きなツケとして響いてくる。

 血税を払って雇った人材にきっちり文句を言う権利を行使しないと、どんな政策の成果も話題にならず、気がつけば、いつのまにか生きにくさが僕らの自己責任にされてしまうんだから。

 自殺対策は、それを止めたい人の論理で進められては困るのだ。

 「誰かを自殺に追い詰めている私たちに何が足りていないのか」という反省から出発しなければ、死にたい当事者のニーズと釣り合うだけの「共に生きていきたい当事者」としての自覚や価値は得られない。

★2015年は、自殺対策基本法の施行から10周年

 今年も含めて過去9年間、自殺者数はほぼ横ばいで、自殺を減らした割合も10%未満のままが続いてる。

 100点が満点のテストで10年間も10点未満しかとれないとしたら、その教科はその人にとって「決定的に苦手」と考えるのがフツーだろう。

 でも、官僚は自分が苦手であることは絶対に認めたがらない。
 そのアホな意固地が、救えるはずの9割の人間を救えないダメな自殺対策を続ける結果になってるんだ。

 行政や政治に生きやすさを期待したところで、現実は何も変わらない。
 むしろ、自殺に至るまで当事者の問題をこじらせず、より生きやすい社会の仕組みを民間で作る方に希望がある。

 次回のブログでは、民間で自殺対策を無理なく進めるための具体的な方法論を提案したい。

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