株式会社リブセンスで
「転職会議」というWebサイトを運営している方からメールをいただいた。
リブセンスとは、東証マザーズに25歳という最年少で上場したことで話題になった
村上太一さんが代表を務める会社だ。
僕は基本的に若い世代の挑戦は応援したいので、新サービスのリリースが送られてくることは歓迎する。
ただ、そのプロダクトに対しては、率直な意見を言うほうなので、必ずしもベタホメはしない。
さて、「転職会議」運営者からのメールでは、
「私どものビジョンに共感していただき、転職会議がリンクを張るに値するサイトだとご判断いただけましたら、是非転職会議のリンクを掲載していただきたい」とのこと。
「私たちのビジョン」とは、
「『企業が人々を選ぶ時代』を『人々が企業を選ぶ時代』に変えること」という。
「現状、求職者の方々は企業が発信する求人情報を主な情報源として転職先を選んでいます。
一方で近年、企業と就職者間のミスマッチ問題が叫ばれています。
これは求職者側の応募企業に対する情報不足が原因の1つになっているかもしれません。
企業の内情をもっと知ってから転職先を選ぶことができればミスマッチを減らすことができるのではないか。
そう考えて運営しているのが転職会議です」(運営者のメールより)
運営者によると、「累計会員数70万人を超える日本最大の転職クチコミサイト」という。
僕はITビジネスにくわしくないので、「累計会員数70万人」にどんな意味があるのか、わからない。
むしろ、僕の関心は、「ミスマッチを減らす」のがこのサイトのミッションならば、このサイトを利用した会員のうち、どれだけの人が就活後にミスマッチの印象を持たずに働けているのかの成果にある。
しかし、このサイトでは、そうした成果が日々発表されているわけではない。
従業員、元従業員、取引先、知人が勤務してるという人、家族が勤務してるという人、面接・試験を受けた人などが、それぞれの立場からクチコミでその会社を評価するコメントや質問への答えをアップした集積結果が公開されているのだ。
転職に関連する質問項目の答えが集積されている投稿サイトだ。
では、その質問項目とはどんなものかといえば、以下のようなものだ。


これは印象批評そのものだ。
アップする人それぞれの感性によって平均や傾向を観る上で精度が曖昧になりがちだ。
たとえば、「仕事が多い」について、ある人は「残業が多い」という印象を持つかもしれないが、他の人は「毎日定時に終わるものの、息をつくヒマもないほど消耗する」という印象を持つかもしれない。
このように、同じ「仕事が多い」でも、その内実はあまりに違う。
そうした曖昧さを避けるために、精度の高い統計を取る際は、客観的に答えやすい選択肢を準備したほうがいいのではないか?
たとえば、残業が「多い」と判断するには、平気的な残業時間よりどれだけ多いかで申告してもらうほうが、就活生や転職希望者には有益な情報になる。

上記の統計は、
DODAのサイトにあったものだ。
業界ごとにも残業時間の平均は異なるだろうから、ユーザの希望する業界の会社がどれだけ平均から離れているかを教えてあげると、なお良いだろう。
こうしてみると、上記の質問項目には大いに改善の余地があるような気がしてならない。
特定の会社を判断するための客観的な基礎データをふまえておかないと、最悪の場合、2ちゃんねるような裏の取れない印象批評がはびこったり、情報量が多い割に精度の低いサイトになってしまうんじゃないか。
社名が出るなら、その会社の最近のニュースも同時に表示されると、クチコミとマスコミの両方の評判を参照できる。
僕はパナソニックを検索してみたが、「追い出し部屋」に関するニュースはひもづけられていなかった。
厚労省が指導に入るかもしれない昨今、こんな大きなトピックスが就活の資料にならないわけがないのに。
いっそ、その会社の「ブラック度」も客観的な指標でクチコミを集めて、「今日のブラック企業」というコンテンツをお楽しみでもいいから掲げておけば、その会社の良いところばかり鵜呑みにしていた世間知らずの人が追い出し部屋に入れられる悲劇を避けられる。
それこそが「最悪のミスマッチ」を避けられるという点で大きな社会的価値になるし、逆に良い会社は「ホワイト企業」として応援してあげたり、年に1度、「100万人のクチコミによるホワイト企業大賞」として表彰してあげるなど、ダメな企業を駆逐し、優良企業をどんどん知らしめる仕組みをはっきり持ってくれたほうが、いいのではないか?
もちろん、本来の機能に加え、就活したいユーザの属性とマッチング度の高い企業がランキングで紹介されるなどの精度の高いサイトに育ってほしいと思う。
もっとも、まだこの「転職会議」はよちよち歩きの段階だろうから、「ミスマッチを減らす」という曖昧なミッションではなく、たとえば「2014年12月末までに現時点のミスマッチを半分に減らす」というような具体的な数値目標をリブセンスには公言してほしい。
そのためには、現時点で就活のミスマッチで切実に困っている「就活弱者」がサラリーマンの何%なのか、実数では何万人規模いるのかという調査が必要かもしれない。
その深刻さが数字で見えてくれば、そのこと自体が社会的課題として明確になる。
「ミスマッチ」を考える上でも、就活満足度にはいろいろな指標があるだろう。
★自分のやりたい職務内容ではなかった
★自分のやりたい職務の部署なのに、5年経っても希望職種につけない
★自分のやりたいことをさせてもらえているが、労力の割に給料が少ない
★仕事にはやりがいがあるが、職場の人間関係がブラックすぎるのがつらい
★上司が早く帰られないので、無駄な残業時間が多い
★同期入社でも、同じ給与で労力が異なる仕事をさせられている
★会社は利益を上げているが、法令遵守ギリギリの灰色のビジネスで摘発が怖い
…などなど、いろんな「ミスマッチ」が考えられる。
でも、それを上手にジャンル分けし、質問を洗練させて編集し、なるだけ数値で答えられるように配慮していけば、少なくとも現状のサイトよりは就活生や再就職志願者にとって会社選びの基準の豊かさを学ぶチャンスになるだろう。
もっとも、「いつかはこの闇から抜けられるはずだ」と転職をガマンしてる人も少なくないはずだ。
そういう人たちに、いま勤めている会社で要求されるスキルを持っているなら、「もっと良い会社にあなたは入れますよ」というメッセージになるような統計も必要かもしれない。
さらに言えば、株の投資をやってる人間など、もっと広いネット市民に会社を査定させてもいいのでは?
上場してるなら、投資家から見れば「この会社、ヤバそうだ」と気づけるのに、その会社の社員は気づかないまま突然にリストラになる大企業だって珍しくない時代なのだから。
とはいえ、
「『企業が人々を選ぶ時代』を『人々が企業を選ぶ時代』に変えること」は大歓迎だ。
もっとも、変えるのが「時代」なら、そんな「時代」をいつまでに作りたいのかという〆切りを示してほしい。
それが、企業の社会的責任だからだ。
かっこいいことは、中学生だって言える。
ケネディは「1960年代に人類を月に行かせる」と公約し、その言葉通りに実現した。
村上社長は、「そんなの無理」をやり遂げてほしい。
まだ20代なんだから、さ。
社会起業家のジョン・ウッドあたりの自伝を読んで、刺激を受けてみるといい。
ソーシャル・イノベーションとは何かがわかると、今より2歩も3歩も成長できると思うから。
※なお、この「つづき」は、
このブログ記事にあります。
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