僕は自分が親の望む「良い子」として多くのことに耐え続け、荒れることを徹底的に自らのうちに封じ込めてきた10代だったことを、「あれでよかったんだろうか?」と自問することがときどきある。
自分で言うのもなんだけど、できた子を持つと、親は親として成長するチャンスを奪われたも同然だ。
引きこもり生活の果てに金属バットを持って暴れだしたり、髪を染めて盗んだバイクで走り出すような10代だったなら、きっと親は自分のしつけや教育をどこか間違えたかもしれないと思うだろう。
しかし、そういうのがダサいと感じていた僕は、表面的にはとても「良い子」として育った。
だから、親は、親として成長できなかったのかもしれない。
僕が障がいや病気、自殺願望などを持つ人に、その属性だけで何の同情もわかないのは、弱者に居直りながら人を支配する構えに延々とさらされてきたからだと思う。
小さい頃から認知症の親を見てきたようなものだ。
おかげで当然怒っていい時でさえ怒れなくなった自分に気付いた。
だから常にコミュニティの外側に関心を持ち、そこある豊かな文脈の存在に救われるようになった。
自分を見失わないために、抱えきれないものを手放すことに、いちいち苦々しさを感じてはいけないのだと言い聞かせてきた。
自分の小ささを責め続けても、未来を開くことはできないのだから。
親は、親というだけで子どもには支配的に映る。
なんでも親が判断してしまう家庭では、子どもは判断の主体性を奪われかねない恐れを常に抱いている。
自分自身の好き嫌い、味、倫理などについて自分で判断することこそが自尊心そのものなのだが、自尊心の大事さに気付けないほど経済的かつ精神的に余裕が無い親の下で育てば、子どもまで他の人の自尊心を大事にできない人になりかねない。
子どもには,それに対する潜在的な恐れがある。
「これ、美味しいから」と食事のたびに母親にだけ美味しい味に慣れていくことから始まり、時に「お母さんを困らせないでほしいの」という泣き顔を見せられては不満を黙って飲み込む癖がつき、「結婚なんてしなければよかった」と虚無と孤独に満ちた独り言を何度も呪いのように聞かされた。
そして、老いては「どうせ寝たきりになったら自殺するんだ」とわが子を前に平然と語る母親。
家族も含め、自分以外の誰に対しても、自分とは生き方も好き嫌いも舌も経験値も違うことに配慮する心の余裕がなく、いや仮にあったとしても、違いに配慮する作法が世の中で生きていける方法なのだと学ぶ社会経験も乏しかった専業主婦の母親。
現在70代の彼女の育った時代には、娘が決して「No!」をいえない家父長制があったのも事実だし、現代のように発達障がいを自覚できるチャンスもなかったし、親は親というだけで子どもを支配し、従わせていいものだという空気もあった。
40年も経てば、時代は激変し、従来なら善とされていた価値も、やがて悪に変わる。
人類や社会が成長し、成熟していけば、以前より高い倫理観や広い視野で物事を裁定するようになるから、若い世代によって過去の価値観は否定されていくのが常なのだが、あらかじめ虚無や孤独を生き抜いてきた人にとって、自分以外の誰かが、社会がどうなろうと、関心外なのだ。
虚無と孤独を生きる人にとって、自分が育て、自分より優秀になった子どもから否定されるのは、耐え難いことだろう。
でも、一方の子どもは、時代の激変の中で生きやすさという恩恵を受けてきた。
高度経済成長という時代の恩恵の中では、マジメに働けば、子を養える。
だから、上司から嫌味を言われようと、「わが子のため」と耐え忍んできたのが、僕の親の世代だ。
おかげで僕は経済的にはさほど不自由することなく、大人になれた。
でも、そうした恩恵と引き換えに、子どもが親の虚無や孤独と向かい合うことを宿題として引き受ける義務なんてあるのだろうか?
がんばって親業を努めれば、そのことで親はすべて免罪されるのだろうか?
僕には「親になればわかる」という言葉が、体罰やいじめを受けてきた下級生が上級生になった途端に加害者になることを厭わなくなる現実と同様に、とても怖い言葉のように思えてならない。
親の因果をすべての子どもが引き受けなければならないなんて、誰が決めたのだろう?
少なくとも、「親の因果を負うことが大人になることだ」なんていう理屈には、僕は絶対に納得できないし、したくもないし、しないつもりだ。
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