同じ地域の中に複数のNPOがあれば、みんなでイベントを共有し、被支援者がそこに集まれるようにするといい。
たとえば、ニートや引きこもりの自立支援のNPO、障碍者の就労支援をするNPO、児童虐待やDVの被害者を支援するNPO、あるいは環境保護活動を行うNPOなど、同じ地域にはさまざまなNPOが混在している。
ニートも、ひきこもりも、障碍者も、被虐待児も、みんな毎月1回イベントに足を運ぶチャンスが作れるはずだ。
それはトークイベントでも良いし、芋ほり大会のような農作業でもいいし、仕事つくりでもいい。
せめて月1回誰かと触れ合うチャンスを地元のNPOが持ち回りで開催すれば、6団体もあれば、1年に2回だけ自分の事務所でイベントを作れば良いし、共有のイベントサイトを運営すれば、媒体力もついてくる。
1年に2回なら半年も準備期間をかけられるし、6団体で合同だから集客もしやすいし、たくさんの人が集まれば、新聞やテレビの報道陣も取材相手が絵になるので、取材しやすくなる。
このように、NPO自身が活動の枠を超えてつながりあえば、ニートや障碍者などの被支援者たちどうしの出会いを促進させ、お互いの利益になる。
ひきこもっていた若者も、車椅子でしか移動できない障碍者と出会うことで、「自分なんか何もできないクズだ」と思っていたのに、「こんな自分でも役立てるチャンスがこの世の中にある」と気づくだろう。
被虐待児も、ニートの若者たちと出会うことで、「いつまでも親からダメージを与えられて自己評価が低いままだと失業者の将来が待っている」と危機感を覚えるだろう。
社会的弱者の抱える苦しみの多くは、孤独であり、孤立だ。
とくに、被災地では独居する高齢者の孤立の問題は大きい。
パートナーを震災で亡くし、ご近所の隣人も津波で流され、行政の支援の手も及ばない。
だから、たとえば宮城県石巻市では、ニート支援をやっていた
NPO法人フェアトレード東北が、震災後は高齢者の自宅を巡回し、話し相手になる事業を始めている。
孤立と孤独をこじらせてしまうと、自分だけが不遇な身であることを呪い、世間が敵にように思えてくるので、ますます小さな世界や狭い人間関係に自分の身を隠すような付き合い方になってしまう。
このことの重要性にNPOのスタッフ(=支援者側)が気づいていないと、NPO自身も活動領域の中に外からの風を入れないようになり、被支援者の自立が目的なのに、なかなか成果が上がらないことになってしまう。
問題解決がどうしてもできない場合、その多くは自分の関心内のことにしか目を向けていないことに起因する。
解決のヒントは、むしろ自分の関心外に豊かに発見できる。
その一例を紹介しよう。
あるとき、僕は東京都内で廃材から商品を作るNPO法人Newsed Projectから相談を受けた。
「英字新聞が大量に廃棄されているので、これを強度のある紙バッグにしたいんですが、福祉作業所に声をかけても、みなさん『うちの障碍者には無理』と断るんですよ。どこか受注してくれる団体はありませんか?」
そこで僕は、千葉県木更津市で障碍者の工賃アップに取り組んでいる「hana」という作業所を紹介した。
「hana」はすぐにNewsed Projectと連携し、紙バッグを作り始めた。
その後、「hana」はやはり東京都内で新作スィーツをプロデュースしているテミルと組み、美味しいスィーツを障害者と一緒に作り始めた。
おかげで、「hana」に通う障碍者の中には、工賃が3倍に跳ね上がった人が続出した。
一方は、「エコ」がミッションのNPO。
他方は、「障碍者の自立」がミッションのNPO。
一見すると、何の縁もない両者を結びつけることができたのは、僕のような媒介者がいたから、ではない。
両者には、それぞれのミッションをビジネスの手法で実現させる「社会起業」の意識が共通してあったのだ。
ビジネスの関係なら、お互いにwin×winになる仕組みを考えようとする。
この仕組みつくりに対して面白がれる感性がなく、自分の団体の利益や収支ばかり気にかけていては、いつまでもミッションは達成されないし、それで困るのは支援しているはずの「被支援者」である。
つまり、被支援者の利益を団体の存続よりも真っ先に考えるなら、NPOは寄付や回避や助成金に依存した運営ではなく、幅広く外部と連携して収益事業を生み出して活動費を賄う事業型NPO(=社会起業家)へ進化する必要があるのだ。
そのためには、近隣のNPOはもちろん、地元の青年会議所や商工会議所、CSR活動に熱心なベンチャーなどに自ら声をかけ、ビジネスとしてお互いのリソース(資源)を認知し合い、活動内容をシェア(共有)していく試みが進められる必要がある。
NPOどうしがシェアのうまみに気づかないなら、外部からネットワーク的にNPOを結び付けあうしかないのかもしれないが、そうした代理店的に動く人に任せていると、コストは余計に高くつく。
僕は優秀な社会起業家どうしを引き合わせることを無償でやっているが、現時点では自分の率いる団体を事業型の組織へ成長、進化させたい人を増やすことが急務だと考えている。
貧困は、当事者にあるだけでなく、支援者の発想の中にもある。
だからこそ、外部の団体と組んで幸せなシェアモデルを試行錯誤するNPOがもっと出てきてほしい。
自分のところだけであれもこれもやろうとするから、コストも労力も時間もかかって、なかなか被支援者の利益につながらないのだ。
このシンプルな発想によって、地域のNPOが活性化してほしいと切に思う。
社会起業家について少しでも知りたい方は、ぜひ下記リンクのゼミに顔を出してほしい。
NPOスタッフはもちろん、今後ソーシャルビジネスを手がけたい人にとっては、二度とないチャンスだ。
★社会起業家・養成ゼミ TOKYOhttp://socialventure-youseizemi-tokyo.blogspot.jp/
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