2010年、『日本一醜い親への手紙 厳選100通版』(ノンカフェブックス)と、『パパとママからのラブレター』(同)という本を企画・編集しました。
『日本一醜い親への手紙 厳選版100通』とは、1997-1998年にメディアワークスから出版した本のアンソロジーで、親から虐待された人たち100人分の体験記を収録した復刻版です。
『パパとママからのラブレター』とは、子どもを生む前からの夫婦の物語を語ったもので、「どんな人も愛から生まれてきたんだ…」という気持ちにさせられる珠玉の手紙集です。

この2冊の本の印税(定価の15%)のうちの10%を、千葉県君津市にある自立援助ホーム「人力舎」に寄付すると当初から申し上げておきました。
版元は神戸の小さな出版社ノンカフェブックスですが、この5年間で2冊合計で2400部を売ることができました。
●日本一~ 1400部×定価1300円×印税率15%×寄付率10%=2万7300円
●パパママ~ 1000部×定価1300円×印税率15%×寄付率10%=1万9500円 そして、この総額4万6800円を、今年2015年7月に振り込み、今日(8月27日)、「人力舎」を訪れ、領収書をいただきました。
5年前はNPO法人として運営されていた同ホームは現在、社会福祉法人生活クラブという組織で運営されています。
自立援助ホームとは、義務教育終了後の15歳から20歳までの家庭がない児童や、家庭にいることができない児童が入所して自立を目指す民間の施設です。
民間施設である
自立援助ホームでは、10代でも家賃を負担する必要があるため、多くは昼間にアルバイトをかけもちし、夜間部の高校に通う生活をしています。
こうした民間の施設は、NPO法人や社会福祉法人などの非営利事業団体によって運営されています。
しかし、資金や人員(スタッフ)不足のところもあれば、夜間部の高校生をバイトとして雇える会社が地域に少ない土地もあり、自立援助ホームの運営は大変です。
公式サイトで日用品などの支援を求めている団体も珍しくありません。
なにしろ、ここに住まなければならないのは、親から虐待されたり、親が失踪してしまったり、親がいなかったりなど、さまざまな事情で親元で暮らせず、塾や通信添削、進学費などの教育投資を誰からも受けられないでいる10代後半の子たちです。
スタッフは親の代わりとして子どもたちから精神的なよりどころを求められますし、地域の不良たちからの勧誘から守る必要も生じたり、暴力的な親から守るために偽名を使う子もいるぐらいです。
そうした大変な仕事であるため、スタッフを調達するのも難しく、つぶれるホームもあれば、定員まで子どもを受け入れるのを拒否するホーム運営者もあるほどです。
そこで暮らす子ども側も、18歳で高校を卒業できたとしても、就職先として正社員になれる子は少なく、バイトを掛け持ちして生きていく大変さを負うことが多いんですね。
また、高卒後も、専門学校や大学などへ進学できる学費や教育投資が調達できないため、バイトばかりの低収入のまま、孤立した暮らしを続ける子がどうしても多くなってしまい、それが時には挫折の要因になることもあるようです。
「人力舎」では、5年前に施設長だった高橋克己さん(下記写真:右)と会い、寄付金の領収書をいただきました。
(注:この寄付については、弁護士の
紀藤正樹さんに監修・協力を仰ぎました。紀藤さん、ありがとうございます!)
高橋さんは今、生活クラブの一員として、ホーム長を担っています。

高橋さんによると、人力舎でも、東京のセカンドハーベストの協力でフードバンクによる食品の提供を受けているそうです。
これにより、施設や子どもたちは食費を浮かす一助となります。
また、ホームの家屋も、地域にあったものをコンバージョンし、部屋を増改築し、現在は5人の子が暮らしてるそうです。
こうした現状を目の当たりにして、僕は2つの課題があると考えました。
一つは、夜間部の高校での進路指導で、東大卒より中卒が年収が高くなる方法を教えていないこと。
実際、日本で一番平均年収が高い東大卒でも、その額面は830万円程度です。
もし15歳で全国チェーンのラーメン店で働き始めると、30歳を過ぎたあたりで店長クラスになり、年収は1000万円を超えます。
ところが、そうした現実を知らず、地域にある町工場ぐらいしか中卒や高卒の就職先が無いかのように思い込んでる高校教師は珍しくありません。
教師たちは全員、大卒ですから、中卒や高卒が大卒の年収を上回れるチャンスがどこにあるのかを本気で調べないのです。
もう一つは、少ないバイト先を地域の10代と奪い合うのではなく、自分たちで自分たちのしたい仕事を作れる人材に育てる(=起業家としての経験・教育のチャンスを提供する)必要性です。
この2つの課題について、今後、どんどん取材・執筆・書籍化していく必要があるような気がしてきました。
高齢者や障害者の福祉は、その該当者が有権者であるため、権利主張することで税金による支援を調達できます。
しかし、児童福祉は、該当者が未成年であるため、政治的解決が本当に難しいので、民間団体による支援か、当事者である子ども自身による自力解決しか、自分の人生の希望を作り出すことができません。
児童福祉の業界は、今なお、福祉に携わる大人の人材のスキルアップや境遇改善にエネルギーと資金が投入されています。
しかし、10代の当事者の子どもにとって、そうした福祉のあり方が満足度の高いものであるかどうかと問えば、「高い」とはとても言えない状況でしょう。
「親の代わりに育ててもらってありがとう」の気持ちを抱いても、ホームから去るしかない20歳以後の人生は不安に満ちています。
それは、ソーシャルデザインやソーシャルビジネスを活かすチャンスが潜在的に大きいことを意味しています。
自分の人生をもっと満足度の高いものに変えるためにも、社会をより良いものへ変える仕事や仕組みが必要になります。
その一助としては、
『よのなかを変える技術 14歳からのソーシャルデザイン入門』(河出書房新社)という本が役立つかもしれません。
もっとも、「東大卒より稼ぐためのキャリア」と「10代でも稼げる技術」については、さらに詳細な事例とノウハウを紹介した本を作る必要がありそうです。
福祉や教育、ソーシャルデザインやビジネスに関する雑誌・新聞・オンラインメディア・企業広報誌などで、この2つの課題を解決するための事例とノウハウについて連載できる媒体を探しています。
あるいは、テレビやラジオでもレギュラー枠として「10代でも稼ぐ」をテーマにした番組を担当させてもらえれば、うれしいです。
もし、あなたの友人・知人に新聞・雑誌・テレビ・ラジオなどでお仕事を去れている方がいらっしゃいましたら、ぜひこのブログ記事をお勧めください。
また、いま働いている会社の社内報や企業広報誌で、親元で暮らせない事情をもつ10代の子を救える記事を連載できるチャンスがあるなら、ぜひ僕にご紹介ください(メールは
こちらまで)。
よのなかには、10代でも自分で仕事を作ったり、会社を設立したり、自営業者になる子も全国に続々と現れています。
彼らは必ずしも裕福な家の子ではありませんし、小・中学校もまともに行っていない子も少なくありません。
でも、そうした子どもの最先端事情を報じるメディアは少なく、ネットで有名になる具合です。
また、公教育で「稼ぐ技術」を実践的に教えられる機会は、商業科などの「普通科ではない」高校のみです。
こうした事情に照らせば、親元で暮らせない子どもが、低賃金のバイトだけで暮らしていくハンデを一生背負い続ける現実を変えるために、彼らに「稼ぐ技術」をみっちり教えられるチャンスを作り出し、やる気さえあれば、親がいなくてもちゃんと人並に食べていけるし、結婚もできるという希望をもてるよのなかにするのが、大人の役割ではないでしょうか?
彼らに親はいないかもしれません。
でも、大人は全員、彼らの親になれるのです。
有名人も、会社社長も、大学生も、ニートも、主婦も、誰もが、彼らの親になれると思うのです。
なお、
『日本一醜い親への手紙 厳選版100通』や
『パパとママからのラブレター』は、今も買うことができ、買えば買うほど自立援助ホームを応援できます。
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