広告がらみではない、ニュースサイトで取材・執筆してるwebライターのギャラは、めっちゃくちゃ安い。
たとえば、社会貢献ネタのオルタナの場合、1本800字で5000円(税込)だったが、これは僕が編集部に値上げを要求してやっとアップしたものだった。
しかし、800字だろうが、8000字だろうが、取材の手間は同じだ。
複数のネタを探し、企画を文章化し、編集部に企画OKかNGかを仰ぎ、NGならべつのベタを探し、OKなら800字に収まるように書くという一連の作業で1本5000円(税込)。
それでも、雑誌のような紙媒体での展開ができる出版社で、社会貢献やソーシャルデザインのネタを取材して書けるニュースサイトを運営しているところは多くはないし、オルタナ本誌が他のメディアに先駆けてCSR(企業の社会的責任)やソーシャルビジネス(社会起業)について書ける雑誌を発行していたこともあり、低予算でも応援するつもりで書いてきた。
しかし、僕より若い世代が満足な取材経費を得られず、安いギャラに甘んじてしまう恐れから、僕は値上げを要求せざるを得ないと考えたし、オルタナ編集部に金がないのはギャラの支払いの遅延がたびたびあったことで察していたから、僕は「金ではない価値」をライターに提供する必要があることを主張し、その価値とは何かについてワードファイルにして具体的に伝えたり、編集長にもメールで改善を要求するなど、何年間にもわたって水面下で交渉してきた。
それでも、実際に改善できたのは、多少のギャラ額面のアップと、僕の署名原稿に僕の本のAmazonアソシエイトリンクを貼る程度。
それも編集部員が貼るのを忘れて、そのたびに僕自身からツッコミを入れるという手間もかかった。
それ以外にも、ろう者にSkypeでインタビューする際に手話通訳をつける取材経費を出すか出さないかを尋ねても、返事がかなり遅くなったり、地方での有益なソーシャルデザインを取材したくても経費が出ないので、基本的に電話取材しかできないなどの難点も延々と続き、外部ライターと適切な関係を築く構えが編集部にないと感じざるを得なかった。
そこで、オルタナやオルタナSで書くことを、僕はやめた。
長年、雑誌の志や心意気を買って安いギャラをガマンしてきたのも、もう限界だ。
今日でも、続々とニュースサイトが立ち上がっている。
しかし、ライターギャラは不当に安いから、プロでリサーチ能力も筆力もある経験者は、積極的にはやりたがらない。
雑誌で1ページあたり1~3万円で取材・執筆し、1案件で複数のページを受注しながら食ってる人たちにとって、ニュースサイト系は単価も安く、発注者側がギャラの安さを「仕方ない」と思考停止しているからだ。
安いギャラで他のニュースサイトと横並びの待遇でより良い人材を集めようなんて、ムチャも良いところ。
安ければ、「やっつけ仕事」になりがちだし、責任もギャラと釣り合う程度しか果たせない。
ましてや、ボランティアで書かせるとなれば、事実確認も、取材対象者との関係も、取材・執筆する人にとって責任が曖昧になる。
そりゃそうだろう。
自腹を切って取材経費を賄い、自分の大事な時間を使って一生懸命に記事を書いたところで、重い責任だけを強いられるようじゃ、誰だって逃げたがる。
もし学生や素人の記者をインターン(見習い)として使うなら、仕事を教える手間とボランティアワークを釣り合わせるのではなく、仕事を万全に教える責任を編集部が果たすのと引き換えに、学生や素人から授業料を受け取るべきだ。
その責任を編集部が果たせないまま、素人にただ働きさせるなら、プロ品質の記事なんてありえないし、期待する方がどうかしてる。
プロに仕事を頼むなら、安いギャラでは、予備取材も、取材前の資料準備も、事実の裏取りも、おろそかになりがちだ。
というか、そうした大事なことをおろそかにして次々に書いていかないと、生活が成り立たなくなってしまうのだ。
そういう「ライター貧困化」に手を貸す仕組みを温存する会社のどこが「社会貢献」「エシカル」なの?
ふつう、そういう会社は「ブラック企業」と呼ばれるんじゃないの?
正当なギャラ額面へのアップがどうしても難しいなら、「金にとって代わる価値」をライターに提供するのが、仕事のパートナーシップと信頼関係を担保するのに不可欠なことだし、それこそが記事の品質管理とPVアップにつながるのだ。
僕はオルタナで書かなくなった。
金にとって代わる価値にあまりに鈍感な編集部に対して、エシカルな関係を望めないと判断したからだ。
同じことを考えて、ニュースサイトから離れてゆく人はきっと珍しくないだろう。
それは、ニュースサイトがPVを伸ばしたり、サイトの信ぴょう性を担保するうえでは、致命的な環境といえる。
ライターがほしい価値は、ライターに聞けばいい。
それは高いコストになるようなことじゃない。
たとえば、次のようなことだ。
★署名記事なら、ライターの簡単なプロフ、公式サイトへのリンク、twitterやFacebookなどへのリンクを必ず紹介する
★本を出してるライターなら、著書へのAmazonリンクを貼る。
★イベントに出るライターなら、その情報をプロフ欄だけでなく記事でも応援し、ライターのブランド力を向上させる
★専門分野のあるライターなら、編集部で講演会を主催したり、全国からの講演依頼を受け付け、編集部は手数料を取る形で自社とライターの収益向上に努める
★長く読まれ続けているオンライン記事は、ランキング表示して、ライターどうしに切磋琢磨させ、より価値の高い記事を目指させる。
これがあるだけでライターはオンライン記事を拡散する動機付けになり、編集部は広告収益を守る一助にできる
★一定期間のPV が一定以上になれば、ギャラをベースアップしたり、読者がライター名で検索して読める誘導検索を設置する。
ライターに投げ銭したい読者が、投げ銭できる仕組みを付加してもいいだろう。
★ギャラとは別に編集部が準備できる取材経費や取材先への謝礼の額面をはっきりとライターに伝え、1案件の記事でも4回分に分けて、まとまったギャラが入る仕組みを作る
★ライター自身が自分の記事に、内容に合うアフィリエイトリンクを貼れるようにし、編集部以外からの収益がライターに入る仕組みを多様に作る。
年1回、PVランキング上位のライターに賞金を出せるプロジェクトを立ち上げ、企業から協賛金を調達してもいい。
他にも、ライター募集をする前に、いろいろなライターからギャラ以外にほしいものをきちんとヒアリングしておけば、お金にとって代わる報酬で求めるものがそれぞれに違うこともわかるはず。
編集部がライターを大事に思えば、外注ライターはいっぱいあるから、編集部からの愛の程度に応えて、記事をtwitterやfacebookに拡散してくれたり、スポンサー企業を探してきてくれるなど恩返しをしようという気持ちにもなる。
外注スタッフが多ければ多いほど、編集部の有形無形の利益は最大化できるのだ。
それを編集部の内側だけで、「外の人は仲間じゃない」という構えを続けるなら、コンテンツは疲弊し、面白い記事も減り、当然のことながらPVは頭打ちし、編集部は稼げなくなる。
「人件費は安ければいい」という発想で思考停止を続けるなら、コンテンツはいつまでも品質管理ができず、PVも伸ばせず、信憑性も上がらないまま、費用対効果の悪いニュースサイトになって、ジリ貧への道だ。
それは、編集部も、ライターも、読者も、誰も幸せにしない。
記事を書くのは、人間だ。
そして、生活者であり、労働者だ。
安いギャラでも志をもって仕事をしてきたライターは、余計に金だけじゃ動かないことを、よく理解してほしい。
さて、今より生きやすい「よのなかの仕組み」を作り出すソーシャルデザインについて知りたい方は、ぜひ以下のイベントに足を運んでほしい。
どれも予約が始まっているので、お早めにチェックしてね!
■6・3夜 新宿で宮台真司さんとソーシャルデザイン(←クリック)
6月3日(水) 開場 PM6:30 開演 PM7:30~PM11:00/新宿・歌舞伎町ロフトプラスワン(※子育てと仕事の両立、動物殺処分ゼロ、途上国支援などに取り組む団体が大集合!)
■6・12夜 ソーシャルデザイン白熱教室@早大 ~誰でも無料 (←クリック)
6月12日(金)開演PM7:00-9:00/早稲田大学 早稲田キャンパス3号館405教室(※よのなかの仕組みを変えるソーシャルデザインや社会起業について超わかりやすく講義)
■7・7夜 大阪でソーシャルデザイン「よのなかを変える人たち」(←クリック)
7月7日(火) 開場 PM6:30 開演 PM7:30~PM10:30/大阪ミナミ ロフトプラスワンWEST(※Googleに日本一に認められたホームレス支援、LGBT、動物殺処分ゼロなどの団体が集合)
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